2010年02月03日

小さな墓の上に


ポエムを拙く朗読。


「小さな墓の上に」 立原道造

失ふといふことがはじめて人にその意味をほんたうに知らせたなら。

 その頃、僕には死と朝とがいちばんかがやかしかつた。そのどれも贋の
姿をしか見せなかつたから。朝は飽いた水蒸気の色のかげに、死は飾られ
た花たちの柩のなかに、しづまりかへつてめいめいの時間を生きてゐたか
ら。
 すなほな物語をとざしたきり、たつたひとりの読む人もなく。骨に暦を
彫りつけて。

なくなつた明るい歌と、その上にはてないばかりの空と。ことづけ。

 墓の上にはかういう言葉があつた――
 たのしかつた日曜日をさがしに行つた
 木枯らしと粉雪と僧院に捕らへられた
 それきりもう帰らなかつた。一生黙って
  生きてゐた人、ここに眠る。
posted by KT at 20:38| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。